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東急子ども応援プログラム

リーダーインタビュー

2022.09.08

リーダーインタビュー Vol.7

OluOlu恩田 雅子さん

「思い切りサッカーができる」環境で、人生を前向きに生きる力を育む。
障がい児と保護者の生きづらさ解消を目指す応援団

脳性麻痺などの障がいを持つ子どもたちに、思い切りスポーツをさせてあげたい――。そんな思いから、障がい児を対象としたサッカー教室を展開している「OluOlu(おるおる)」。障がい児の心身の成長を応援するだけでなく、ボランティア参加者に多様性について考えるきっかけも提供しています。活動に懸ける思いや、2022年度東急子ども応援プログラムの助成を受け注力している活動について、設立者の恩田雅子さんに聞きました。

はじめに「OluOlu」について教えてください。

障がいを持つ子どもたちに「思い切りスポーツができる場所」を

OluOluでは、障がいを持つ小中学生に向けたサッカー教室を中心に、リハビリや訓練ではない“余暇活動”としてのスポーツの場を提供しています。脳性麻痺(CP)やダウン症、発達障害などさまざまな障がいを持つ子どもたちが参加していますが、大まかなくくりで言えば参加する子どもたちは“体を動かすのが苦手な子”です。

毎月1~2回の頻度で開催しているサッカー教室

障がいを持つ子どもが参加できる民間のスポーツ教室は少なく、参加してみたけれど、周囲となじめず気後れしたり、本当は楽しみたいのに、参加しなくなったりする子どもがたくさんいます。そのような子どもたちに、思い切りサッカーを楽しめる場を提供し、チームメートと交流しながら社会のルールを学び、技術の上達を通して自己肯定感を育むことで、人生を前向きに生きる力を身に付けてもらいたいと考えています。

さらに、意欲が高まった子どもを応援するため、サッカー以外のスポーツや文化活動を行う機会も設けています。また、保護者向けの講演会や子どもたちの将来の就労・自立を後押しするための「障がい児及びその家族と、企業・関係団体等との橋渡し事業」などにも取り組んでいます。

恩田さんがOluOluを立ち上げた経緯をお聞かせください。

脳性麻痺を持つ息子の「サッカーがしたい」という一言がきっかけに

私には、妊娠26週で超低出生体重児(出生時の体重が1,000g未満)として生まれた息子がいます。生後間もなく脳性麻痺と診断され、幼稚園、小学校と成長していく各過程で、やはりさまざまな壁に直面してきました。

あるとき息子が「サッカーがしたい」と言い、地域のサッカーチームに入りました。しかし、四肢に麻痺のある息子は思うようについていけず、大好きなサッカーを続けることができませんでした。何とかサッカーをやらせてあげる方法はないか。そう思っていたとき、テレビで「CPサッカー(脳性まひ者7人制サッカー)」というものがあることを知り、「CPサッカーであれば、思い切り楽しめるかもしれない」と考えるようになりました。

ちょうどその頃、息子の幼稚園時代からのママ友で、ボランティア経験が豊富なウォーク梨恵子さん(OluOlu副理事長)から「一緒に何かしない?」と誘われたのです。その場で「障がい児のサッカーの活動がしたい」と答えると、ウォークさんが二つ返事でOKしてくれて、活動を始めることになりました。
さらにコーチとして、息子のリハビリの先生をはじめとする理学療法士さん3名に加わってもらい、任意団体OluOluを結成。2018年10月、最初のサッカー教室を開催しました。

「恩田さんのエネルギーと明るさが大好きで、以前から何か一緒に活動したいと思っていた」と語る副理事長のウォーク梨恵子さん(左)

第1回目の参加者は、私の息子を入れて3名でした。初めのうちは、街で「脳性麻痺かな?」と思うお子さんを見掛けると、「サッカーをやるので良かったら来てください!」と勧誘したりしていました。その後、近所の支援学校にチラシを持っていったり、知り合いに声を掛けたりするうちに参加者が増え、これまでに25名を超す子どもたちが参加してくれています。
また、地域のボランティアセンターに出向くうちにボランティアの輪も広がり、大学生を中心に多くの方に参加いただいています。

団体名「OluOlu」に込めた思い

「OluOlu」はハワイ語で「心地いい」「楽しい」という意味の言葉です。もともとは、いろいろな子が「いるいる」「おるおる」という日本語が頭にあり、偶然ハワイ語の「OluOlu」(おるおる)と同じ響きだったので、団体名にぴったりだなと。太陽が優しくほほ笑む下で、いろんな個性を持つ子どもたちが一緒にスポーツを楽しんでいる、そんな温かいイメージを思い浮かべて命名しました。

サッカー教室に参加している障がい児と保護者の方の現状を教えてください。

回を重ねるごとに、子どもたちは「着実にできることが増えていく」

OluOluに参加している子どもたちには、脳性麻痺といっても中度の子もいれば軽度の子もいます。また、発達障害で集団行動が苦手な子や、自閉症で外部の刺激に過敏に反応してしまう子もいます。ダウン症の子もいます。障がいの幅は広く、皆、さまざまな壁や思いを抱えています。

一方、保護者も辛い思いをしています。親御さんがよくショックを受けるのが、学校の授業の様子を知ったときだと聞きます。集団の中で周りと同じスピードで動けない。先生の指示が聞こえなかったり、理解できなかったりする。そんな我が子の様子に、改めてハッとする方が多いようです。「うちの子に団体スポーツなんてできるのだろうか……」そんな不安を抱えながらOluOluに参加される方も少なくありません。

でも子どもたちは回を重ねるごとに、着実にできることが増えていきます。「蹴れなかったボールを蹴れるようになった」「試合に入りたがらなかった子が自ら試合に参加するようになった」など本当に小さな変化ですが、子どもたちは一段ずつ階段を上っていきます。
そんな子どもたちを、私たちはとにかく褒めます。基本的には「できたこと」を拾い、みんなで褒める。そして、周りと比べるのではなく「前回の自分」と比べて成長できるよう、達成したらまた褒める。そうやって少しずつステップアップしていくことを大切にしています。

OluOluでの子どもたちの姿を見た保護者の方から、「ここでなら、うちの子もサッカーができるかもしれない」「安心しました」という言葉を頂くこともあり、子どもや親御さんのやりたいことを応援できていると思うと、本当にうれしくなります。

相手を思いやる気持ちを育む「グリーンカード」

また、OluOluでは「グリーンカード」というルールも積極的に取り入れています。ペナルティを警告するイエローカードやレッドカードと違い、グリーンカードはスポーツマンシップを持った行動やフェアプレーをしたときに出すカードです。良いプレーをしたときにはグリーンカードを出して、盛大に褒める。本人に自信をつけてもらうことはもちろん、そのプレーを見た周りの子どもたちにも、人を思いやる行動を学んでもらえたらと思っています。

「フェアな心を育んでほしい」という思いのこもった手作りのグリーンカード

東急子ども応援プログラムが助成する活動「ひろがれ!可能性!~脳性麻痺児サッカー・障がい児サッカー~」では、どのようなことに力を入れているのでしょう?

安心・安全にサッカーができる「場所の確保」と「人の育成」

さまざまな障がいを持つ子どもたちが安心・安全にサッカーをするためには、場所選びが重要です。以前は、都立の特別支援学校の体育館をお借りしていましたが、コロナ禍以降借りられなくなったため、公園の一角に可動式のゴールを持ち込んでサッカーをしていました。
砂利が敷かれた公園などでは転ぶと危険ですし、周囲が気になり集中できなくなる子もいます。そこで東急子ども応援プログラムの助成金は、まずサッカーができる民間施設を借りる費用に充てています。安心・安全にプレーできることはもちろん、大きなゴールに向かってシュートできることは、子どもたちにとって何よりのモチベーションアップにもなっているようです。

また、指導者とボランティアの育成・拡充にも力を入れています。特にボランティアについては裾野を広げていく予定で、常に募集も行っています。
そもそもなぜ障がい児と保護者が生きづらいと感じるのかを考えてみると、健常者と障がい者が互いのことを「知らない」ことが大きな要因になっているのだと思います。「知らない」を「知っている」に変えていくことが、互いに暮らしやすい社会を生むきっかけの一つになるのではないかと。だからこそ、多くの方にボランティアに参加いただき、活動を通して得た気付きを社会や生活に還元してほしいのです。

実際にボランティアに来てくれた大学生に感想を聞くと、「子どもたちが想像以上によく動くのでびっくりしました!」など、気付いた点をいろいろ話してくれます。その様子を見ていると「知ってくれたんだな」と実感することができ、もっとこの輪を広げていきたいという気持ちが高まります。

今後の展望を教えてください。

皆が居心地良く過ごせる「サードプレイス」にしていきたい

まず、スポーツの取り組みで大切なのは「継続すること」です。継続していく中で、子どもたちにスポーツの達成感や難しさを味わってもらいたい。そのためにもこの活動をできるだけ長く続けていくことを目標としています。

「いつか一つのチーム『OluOlu』として、別のチームと試合をしてみたい」という夢も

もう一つ、OluOluをボランティアも含めた参加者にとっての「サードプレイス(第三の場所)」にしていきたいと考えています。サードプレイスとは、自宅(第一の場所)でも、職場や学校(第二の場所)でもない第三の居場所のこと。居心地のいいサードプレイスを持っているかどうかが、その人の幸せに大きな影響を与えるといわれています。

私は今、社会福祉士の資格を取るため学校に通っていますが、登壇された大学教授にOluOluの活動を話したところ、「OluOluは社会福祉学でいう『サードプレイス』になっているね」と評価していただきました。私たちがこれまで子どもたちや保護者に提供してきた活動が、幸福につながる場所だと言ってもらえたことは非常にうれしかったです。
今後もOluOluが、関わる人皆にとってのサードプレイスとして機能し、定着していくよう、私自身も資格を取ったり、勉強をしながら成長していきたいと思っています。

NPO法人 OluOlu 理事長恩田 雅子(おんだ・もとこ)さん

脳性麻痺を持つ息子の「サッカーを思い切り楽しみたい」という願いを叶えようと、2018年、脳性麻痺などの障がいを持つ子どもを対象としたサッカー活動団体「OluOlu」を設立し、2020年にNPO法人化。障がい児のスポーツ・文化活動の応援団として、「障がい児が主役の、スポーツを中心とした習い事」ができる場所を提供している。「障がい児の保育がしたい」という思いから保育士の資格を取得し、現在は幼稚園に勤務。また、社会福祉士の資格取得を目指し勉強中。

OluOlu

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