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東急子ども応援プログラム

リーダーインタビュー

2022.01.31

リーダーインタビュー Vol.5

地球学校辻 雅代さん

外国につながる子どもたちが安心して過ごせる「居場所」を提供したい。
「いつもの時間に、いつもの場所で、みんなに会える」子ども日本語教室

NPO法人として横浜で活動を始め約20年。広く国際協力の推進に寄与することを目的として、日本語教室をはじめとする多文化交流事業を行っている「地球学校」。第1回東急子ども応援プログラムでは、親の都合で来日した外国につながる子どもたちの日本語習得を支援する「地球っ子教室」の活動を助成しました。「地球っ子教室」担当理事の辻さんに、活動に懸ける思いを聞きました。

はじめに「地球学校」について教えてください。

多文化交流推進のための3つの事業

地球学校では、「日本語教室」「多文化交流」「地球っ子教室」の3つの事業を展開しています。「日本語教室」では、プロの日本語教師が日常会話からビジネスで使える日本語まで、受講者(外国人)のニーズに合わせたレッスンを行っています。「多文化交流」では、お花見や料理教室など、異文化理解や多文化共生を目指したイベントを実施してきました。今後は参加者側のやりたいことを共に行ったり、おしゃべりをする場を設けるなど、もう一歩踏み込んだ交流のあり方を模索しています。
私が担当理事をしている「地球っ子教室」では、主に親の都合で来日し、日本の学校に通うことになった外国につながる子どもたち(主に小中学生)に、無料で日本語指導を行っています。

「地球っ子教室」(対面教室)の様子
「地球っ子教室」では、外国につながる子どもたちに向けたリライト教材を作る支援もしている。写真は小学校の副教材「わたしたちの横浜」と横浜市消防局作成「減災行動のススメ」の【やさしい日本語版】

「地球っ子教室」は
学校でも家庭でもない「居場所」

「地球っ子教室」の活動目的は「日本語の指導」「学校の教科学習の支援」「安心して過ごせる場の提供」です。日本語が分からないと日本の学校に行ってもつまらないし、友達もできず一人ぼっちになってしまう。そこで地球学校の日本語教師をはじめ多様な支援者が、子どもたちに日本語を教えています。
来日してすぐの頃は、教科書や黒板の文字が読めず、授業についていけない子も多いです。ノートに書き写すことはできても、自分が書いた内容の意味が分かっていない子も。そのような状況を見て日本語を教えるだけでは足りないと感じ、教科学習の支援も始めました。例えば、算数の文章題は国語力が必要ですしね。一人一人に寄り添って一緒に考えながら、問題を解けるよう導いています。

もう一つ大事にしている目的が、安心して過ごせる居場所の提供です。同じような境遇の子どもたちが集まるので、「地球っ子教室」では安心して自分らしく過ごせます。けんかもありますが、集合時間になるとわいわい楽しそうに集まってくる。学校でも家庭でもない「居場所」としての意味合いはすごく大きいと思います。

運営する上で大切にしているキャッチフレーズは、「いつもの時間に、いつもの場所で、みんなに会える」こと。今はコロナ禍で模索しつつですが、コロナ禍前までは毎週土曜日の、同じ時間、同じ場所で「地球っ子教室」を開催していました。友達に会いたいとき、進路に迷ったとき、悩みがあるときにふと行ってみたくなる。そこに行けばみんなに会える。そんな居場所であり続けようと心掛けています。高校に進学すると「地球っ子教室」に来なくなる子が多くなりますが、受験を乗り越え学校で仲間ができた証だとうれしく思っています。

外国につながる子どもたちは、どんなことに困り、苦労しているのでしょうか。

孤立・ルールの違いからのとまどいや、高校受験の壁

横浜市は外国人が多いので、他の自治体に比べると、手厚い支援を受けられると思います。しかし外国人の親御さんは日本語が分からないことで日本の教育システムを理解しづらく、子どもたちは母国なら経験しなかったであろう、さまざまな苦労をしています。
例えば、周りの話題についていけず、教室で一人ぼっちになってしまう。あるいは習慣の違いから誤解され、そんな気はないのにけんかになってしまう子もいます。
習慣の違いの一例として、「パンを買ってきて」とお金を投げてよこす子がいました。彼の国では「当たり前」だというのですが、日本だと印象が良くないですよね。周囲から誤解されるのを防ぐため、子どもたちには折を見て日本のルールや習慣も伝えるようにしています。

中学生になると大変なのが高校受験です。日本の受験システムを知らないことにより、自分に適した高校へ行く機会を逃してしまう子も少なくありません。また、入国後の在留期間が通算で6年を超えると日本語の習熟度に関わらず、外国人の枠ではなく日本人とまったく同じ制度での受験となります。母国でしっかり勉強してきた子でも、問題の解き方の違い、例えば数学だと答えを導き出すまでの経過も重要視する日本の出題意図が理解できず、受験の失点につながるケースも多々あります。
高校を卒業していないと人生の選択肢が限定されるなど、将来に大きな影響が出てしまうので、高校受験の手伝いや進路相談にも耳を傾け、子どもたちが望む進路に踏み出し、夢を叶えられるよう積極的にサポートしています。

「地球っ子教室」は辻さんが立ち上げられたと聞きました。その経緯を教えてください。

「子どもの第二言語習得」への関心が原動力に

私の姉は、日本よりもアメリカでの生活が長く、甥や姪もアメリカで育ちました。その子どもたちが外国で親と違う第二言語を習得する様子に興味を引かれ、子育てが一段落した時に、日本語教師の資格を取ってみようと思い立ち、日本語教師の養成講座に通い始めました。

養成講座を卒業した後は、私の地元である神奈川県逗子市で教育委員会臨時職員となり、外国につながる子どもたちに日本語指導をしていました。逗子市には「池子住宅」と呼ばれる米軍住宅があり、主にその子どもたちが通う小中学校に派遣されていたのです。

子どもの第二言語習得に関心を抱いたことが出発点になったと話す辻さん

ちょうどその頃、地球学校の前身であるボランティア団体から、地球学校の立ち上げを一緒にしないかと誘われ、私も日本語教室のクラスを受け持つようになりました。ただ当時の地球学校の日本語教室は、大人向けだけだったんです。私は逗子市で外国につながる子どもたちが苦労するのをたくさん見てきました。大人のように価値観が確立していない中で、日本語で勉強を教わるのですから、大人が想像する以上に大変な苦労を重ねているのです。
そこで「地球学校で子どもの教室もやってみたい」と声を上げたところ、数人の仲間が賛同してくれて、試しに子ども向けの日本語教室を開催することに。実施してみると思った以上に反響が大きく、これなら続けられるだろうと、2003年3月に「地球っ子教室」を開始しました。

以来約20年、横浜駅近くの「かながわ県民センター」で場所を借りながら、「いつもの時間に、いつもの場所で、みんなに会える」ためコンスタントに活動を続けています。事業の立ち上げ時も、活動が始まってからも、一緒に教室を支えてくれる仲間がいたからこそ続けられたのだと、深く感謝しています。

ここ1~2年の活動状況は?

オンライン授業導入で得られた予想外の産物

東急子ども応援プログラムの助成期間となったこの1年は、これまでにない体験の連続でした。もともと助成対象のプログラムでは、「地球っ子教室」の対面授業の充実を図る予定でしたが、コロナ禍で予定が大きく変わり、オンライン授業を導入することになりました。

助成期間中に開催されたオンライン授業
どこの国からでも参加できるオンラインイベント「漢字王決定戦」
当初は私たちにオンライン授業を導入するためのスキルもなく、対面教室の会場となっていた「かながわ県民センター」がコロナ禍で閉まってしまった時には、これからどうしようかとみんなで途方に暮れてしまいました。
その際、多大なお力添えをいただいたのがALIVEプロジェクト(※)参加者の皆さんです。ALIVEプロジェクトとは、企業研修の一環で、多様な企業からの参加者が、社会団体の課題解決に取り組む活動です。ちょうどタイムリーなことに、その支援対象に「地球っ子教室」を選んでいただき、オンラインの手引書作成や教材へのアドバイス、現場でのサポートなど、多方面でご支援いただいて、何とかオンライン授業を導入することができました。

一般社団法人ALIVEが主催。企業の枠組みを超えたチームでリアルな社会課題を解決する異業種混合型リーダーシップ開発プログラム

今回オンライン授業を導入できたことで、参加する子どもたちの家庭での様子に触れたり、授業後に支援者同士で振り返りの時間を持つなど、一体感がより創出されたのは、予想外のうれしい産物でした。ALIVEプロジェクトの方々は今も「地球っ子教室」の支援者(ボランティア)に登録してくれていて、人手が足りないときにLINEで募ると、「お手伝いします」と手を挙げてくださる方が複数います。支援者の幅がこれまで以上に広がったことも、ここ1~2年の活動におけるうれしい出来事です。

今後の展望をお聞かせください。

子どもたちが将来設計を立てるサポートを

今後は、外国につながる子どもたちが、将来のビジョンをしっかりと持てるようサポートしたいと考えています。何年か前に、子どもたちに自分の夢について書いてもらったことがあるのですが、「先生になりたい」「ダンサーになりたい」など、いろいろな夢が出てきました。日本でそうした職業に就くには、子どもたち自身が日本語で調べ、道のりを理解する必要があります。例えばボランティアの中には子どもたちと年齢が近い大学生がいますから、彼ら・彼女らの姿を見てコミュニケーションを取ることで、子どもたちが将来について考えるきっかけになることもあります。日本で進学して社会に出る道のりに自分なりのビジョンを描けるシステムが整えば、子どもたちはもっと自分自身で道を切り開くことができます。

親でも学校の先生でもない私たちは、子どもたちに何か責任があるわけではありません。でも教室に来た子にはあれこれ世話を焼いてしまい、成長した姿を見るとうれしくて、「大きくなったね」「立派になったね」と思わず声を掛けてしまいます。そんなおせっかいな大人が集まり、子どもたちに居場所を提供しているのが「地球っ子教室」です。これからもおせっかいな大人として、いつもの時間に、いつもの場所で、子どもたちの成長を温かく見守り続けたいですね。

最後に、外国につながる子どもたちのために、私たちができることがあれば教えてください。

「やさしい日本語」が外国人と日本人、お互いの理解を深める

「やさしい日本語」をご存じでしょうか。例えば、学校のお知らせなどに「前略」という言葉が使われていると、日本人には分かっても、外国人には伝わらないことが多いですよね。「皆さんお元気ですか?」という平易な言葉にすると、外国人の負担がずいぶん減ります。

今年度の「地球っ子教室」では、外国人にも子どもにも伝わる日本語表現を考える支援者研修を重ねてきました。さまざまな国のさまざまな言語でお互いを理解しようとするのは、私たち支援者にとっても困難です。「やさしい日本語」は日本語を学び始めた外国人にも分かりやすく、お互いの共通言語となり得ます。一般の方々も、この「やさしい日本語」を意識していくだけで、外国人の親や子どもたちが生活しやすくなり、お互いを理解し合える多文化共生社会に近付いていくのではないかと期待しています。「やさしい日本語」とは、「易しい」と同時に「優しい」日本語です。

認定NPO法人 地球学校 地球っ子教室 担当理事辻 雅代(つじ・まさよ)さん

子どもの第二言語習得に関心があり、子育てが一段落ついてから「ラボ日本語教育研修所」の日本語教育養成講座で学ぶ。研修所卒業後は、神奈川県逗子市教育委員会所属の日本語指導員として、小中学校を回り、外国につながる子どもたちを指導。同じ頃に、中国語講座で共に学んでいた仲間の誘いで、地球学校の前身である日本語のボランティア団体で教えるようになる。2000年、地球学校の立ち上げから日本語教師、理事として参加。2003年、子ども向け日本語教室「地球っ子教室」を始め、現在に至る。

地球学校

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