2026.01.07
リーダーインタビュー Vol.21
Youth For Futureチャーラル エムレさん
常識を打ち破り、育て! 未来のリーダーたち。
高校のプロジェクトから飛び出した、学生たちが見つけた支援の形

活動5年目を迎えたYouth For Futureでは、「Think Global, Act Local」の思いを胸に、日本の児童養護施設の子どもたちに向けた支援プログラムを提供しています。
活動を通して何を目指し、この先どこへ向かっていくのか――。高校2年生のときに団体を立ち上げた若きリーダー、チャーラル エムレさんと、団体の渉外部長である陶 嘉豪(タオ ヒロカツ)さんに東急(株)の本社へお越しいただき、その熱い思いを伺いました。
写真左:チャーラル エムレさん
写真右:陶 嘉豪さん
はじめに「Youth For Future」の活動内容や、団体立ち上げの経緯についてお聞かせください。
児童養護施設の子どもたちに、多様な文化と価値観に触れる経験を
エムレさん:NPO法人Youth For Future(以下YFF)は、3つのゴールを目指し、主に児童養護施設で活動しています。1つ目は子どもたちに自己発見をしてもらうこと。2つ目は18歳で社会に出たときに必要なスキルを身に付けてもらうこと。そして3つ目が一番、YFFらしさを表していると思いますが、いろいろな国籍を持つボランティアたちが、英語と日本語を織り交ぜながら子どもたちと接すること。毎週行っているセッションや、サマーキャンプでも、2つの言葉が飛び交っています。
団体を立ち上げたのは高校2年生のときですが、こういった活動に興味を持ったのは東日本大震災の頃です。父が福島に行っていろいろなサポートをしている姿を見て、僕も何か社会貢献をしたいと考えるようになりました。
その後、通っていたインターナショナルスクールの授業としてSDGsに関わる活動を始めたのですが、もっと活動の幅を広げたいという思いが強くなっていきました。そこで、いろいろなインターナショナルスクールの生徒とコラボしながら、SDGs全体をアクションする団体としてスタートさせたのが、YFFです。
スタート当初のメンバーは5人。その中の3人は、今も団体に残ってくれています。今、僕たちは大学生ですが、ボランティアも含めて40人くらいで活動しています。
陶さん:僕はエムレと違う高校に通っていたので、立ち上げメンバーではないのですが、エムレは、いわゆるカリスマタイプというより、「こんなことを実現したい」という大きな目標をしっかり描いて、それを周りと共有できる人だと思います。その考えに共感した人たちが、「自分にもできることがある」と感じて集まり、それぞれが役割を持って関わっていく。だから、高校を卒業した後も、自然と人が集まり、活動が続いているのだと思います。
日本の児童養護施設の子どもたちを活動の対象にしたきっかけは?
「Think Global, Act Local」という考え方が活動の根源
エムレさん:団体の設立当初は、ケニアの学校に文房具や教科書などを送る活動を行っていました。でもお礼の写真が送られてきたとき、もちろん子どもたちの笑顔を見てうれしかったのですが、この支援の形は、寄付し続けることでしか継続できない、サステナブル(持続可能)ではないのかもしれない、と思ったんです。
子どもたちと直接話をすることができないので、本当に喜んでいるのか、本当は何を望んでいるのかも分かりません。そこでチームでいろいろと話し合いました。外国の、いわゆる発展途上国と呼ばれるような国の子どもたちの支援をしているNPOは世界中にたくさんある。では、日本の子どもたちはどうなのか、日本にも苦しい環境にいる子どもたちがいるよね、と。そこで、活動の対象は日本の子どもたちになりました。
次に考えたのが、どんな活動をしていくか、という点です。それを探るために、いろいろなNPOでボランティアを体験しました。
そんな中で出会ったのが、NPO法人YouMeWeさんです。児童養護施設で楽しくデジタルスキルを身に付けられるプログラムを提供されているのですが、そこからヒントを得て、児童養護施設の子どもたちを対象に、YFFとしての活動プログラムを練っていきました。そうして出来上がったのが、「グローバル・アイデンティティ・プログラム(GIP)」です。児童養護施設に毎週、週1~2回通い、活動しています。
以前、ドイツで世界からヤングリーダーが集まるイベントに参加した際、「日本のような先進国に孤児や児童養護施設なんて本当に存在するの?」と驚かれたことがありました。これは、日本が「豊かで安全な国」というイメージを持たれている一方で、支援を必要とする子どもたちの存在が世界的にほとんど知られていないという象徴的な出来事でした。世界では一般的な里親制度も、日本ではあまり普及していません。だからこそ、日本にも助けを必要としている子どもたちが確かにいるという現実を、もっと多くの人に知ってもらいたい。僕たちがその情報を発信することで、支援の輪を広げていきたいと思っています。
陶さん:NPOのような支援活動ってほとんどの場合、きっかけは身近なところからですよね。しかし実際に始めるとなったら、グローバルに動くことが多いと思うんです(Think Local, Act Global)。
でも、エムレは「Think Global, Act Local」が大切だと言います。グローバルな目線で、今世界中にある社会課題を考える。そして同じことが、今自分たちがいるコミュニティーで起きているなら、まずはそれを解決しようという意味です。
解決の過程もよりシンプルになり、結果も自分の目で確認できる上に、深いつながりを築くことができます。ケニアから日本に視点が移ったのは、そんな考えもあったようです。
「グローバル・アイデンティティ・プログラム(GIP)」は東急子ども応援プログラムでも助成しています。どんなプログラムなのですか?
目指すのは、本当に信頼できる存在。「私たちがそばにいる」という思いを込めて
エムレさん:プログラムを通して目指しているのは、実践的な英語力と多様な価値観、デジタルスキルを育むことで、子どもたちの潜在能力を引き出すことです。子どもたち自身が、自分の個性に気付き、その個性を未来への可能性へと変えていってほしい。そんな思いで、インターナショナルスクールや海外の高校を卒業した大学生という多様な背景を持つメンバーが、週に1~2回児童養護施設に通ってセッションを行ったり、サマーキャンプを開催したりしています。
陶さん:YFFの活動は数回で終わるものではなく、子どもたち一人一人に長い時間をかけて寄り添い、成長を見届ける、いわばコミットメントが伴うものです。そのため、子どもたちへの影響の大きさを懸念して、はじめはどこの児童養護施設にもなかなか受け入れていただけませんでした。そのような中で、東京にある一つの児童養護施設が最初に受け入れてくださり、現在も継続して支援を行っています。
児童養護施設の子どもたちは、施設のスタッフさんや学校の先生など、普段は限られた大人にしか会うことがありません。ボランティアのスタッフには、そんな子どもたちと本当の関係性を築いてほしいので、1回きりで終わってしまうのではなく、継続的に会いに行くことを大切にしています。
子どもたちにとって「1~2時間でいなくなってしまう大人」ではなくて、困ったことを相談できる相手になりたい。支援する子どもの「人数」よりも、一人一人の子どもにどれくらいの「質」の影響を与えるかを重視したいと考えています。そのため、一人のボランティアが10人20人の子どもに教えるのではなく、一人の子どもに一人ずつボランティアをつけて、この人は私のお兄ちゃん、お姉ちゃん、のように思ってもらえる存在を目指しています。
エムレさん:児童養護施設の職員さんや学校の先生には異動もあるので、子どもたちが施設を卒業するまでの間に、いなくなってしまうことがありますよね。また、先生や職員さんよりも、もう少し自分の年齢に近い人の方が話しやすいこともあるかもしれません。
僕たちは子どもたちが18歳になって施設を出るまでずっとここにいる、という思いを子どもたちに伝えたいです。
-
一人の子どもを一人のボランティアが担当し、英語と日本語を使ってさまざまなセッションを行う -
GIPはプレゼンテーションやディスカッションなど、社会に出てから役に立つスキルを身に付けられるプログラムになっている
エムレさん:僕たちが大切にしているのは、「つながり」。コミュニティーというより、ファミリーのような雰囲気です。今年のサマーキャンプでは、初めて2つの児童養護施設の子どもたちを一緒に連れて行ったのですが、この2つがどうつながるか、実は少し不安もありました。
でも最終日に、違う施設に在籍する中学生同士が、LINEの交換をしたいと話してくれました。施設のルールで、交換はできないことを伝えると、じゃあ次のイベントで会おうと言葉を交わしていました。施設の子どもたちが抱える大きな問題の一つは友達づくりです。YFFのプログラムがその友達づくりの場になれたことが、本当にうれしかったです。
陶さん:また、前回のサマーキャンプで、ある子どもが別の施設の子にからかわれた際、同じ施設の子がその子をかばってあげるという場面がありました。今までなら自分を守るために関わらない方がいい、となりそうなのに、初めての外との交流で、仲間や兄弟を守るみたいな感情が芽生えたのかもしれません。その姿に成長というか、絆のようなものを感じました。
彼らは施設の外での人間関係づくりの機会がなかなかないため、児童養護施設から社会に出たときに、人間関係を築くことに苦戦しているのが現状です。それを僕たちが解決していけるのではないかという、やりがいにつながった瞬間でした。
-
子どもたちが日常とは異なる環境に身を置き、多様な人々や多文化に触れることで、自信をつけていくことを目指す -
サマーキャンプの初日は、「社会起業家精神」をテーマに事前に作成したポスターを使ってプレゼンテーションを体験
今後の展望を聞かせてください。
子どもたちとつながり続けながら、ヤングリーダーも育てたい
エムレさん:子どもたちは18歳で施設を離れますが、それ以降も私たちは1カ月に1回は一緒に食事をするなど、つながり続けることを大事にしていきたいと思っています。自分は生きる意味があるのかと考えるのではなく、18歳になった後も不安なく生きられると感じてほしい。ファミリー的な空間をなくすことなく、一歩ずつ着実に、活動を広げていきたいですね。
また、子どもたちが成長するために「経験」はとても大切なので、1週間くらいの海外留学をしてもらいたいとも考えています。職員さんに同行してもらい、現地の学校に通いながら、普通ではない、特別な体験をしてほしいんです。とてもチャレンジングな経験になるはずなので、それを通して子どもたちがもっと強くなり、18歳になって社会に出たときに、自分で生きていく力を身に付けてほしいと思っています。
陶さん:それに向けて、例えばパスポートを取らなくてはいけないとか、いろいろとハードルはあるのですが、ここ1、2年間でやりたいことの一つですね。
エムレさん:もっと大きなところで言うと、ヤングリーダーを育てていきたいです。今の中高生、大学生が日本や世界における未来のリーダーになっていくのが一番大事だと思うので、これから社会貢献プロジェクトをやってみたいという高校生に向けて、メンターシップのプログラムを作りたいと考えています。
例えば教育だったら教育系のNPOをやっている人がその人のメンターになる、という仕組み。メンターを学校の先生ではなく、自分でプロジェクトをやった経験のある人たちにするのは、経験に基づいたコメントやフィードバックをもらえるからです。そのプログラムを日本から世界に広げていきたいですね。
今世界で起こっているいろいろな問題を解決するためには、自分の団体だけでは無理なので、これからのヤングリーダーを育てることはとても大切だと思っています。
最後に、この記事を読む方へのメッセージをお願いします。
「Take Action!」希望とは待っていても生まれない、自らつくり出すもの
エムレさん:世界を変えていくために、人々が希望を持つことはもちろん大切です。でもほとんどの人は他の人が何かをやっているのをテレビで見たり、記事で読んだりするだけで、行動を起こしません。例えばこの記事を読んで、子どもたちへの支援は必要だよね、いい活動だね、と思って終わりとか。でも僕が信じているのは、希望というのは、自分のアクションで出てくる成果物であって、アクションを自ら起こさなければ希望は生まれないということ。
自分の希望を現実にするためには、自分で努力しないといけない、アクションを起こさなければ何も変わりません。Take Action! 何か思うなら、すぐ行動しましょう。
陶さん:僕からも、一言いいですか? ただいま絶賛、スポンサーさま募集中です!
エムレさん:同世代の人たちには「常識を破壊しよう」と伝えたいです。日本では、いい高校に入り、いい大学に入り、いい会社に入る、というルートを目指す人が多いですが、それでは、未来が人に渡されてしまうだけ。自分が見たい未来をつくるためには、そういう常識や決まりごとみたいなものを壊さなければいけない。本当に見たい未来に行きたいなら、常識を破ることが一番大事だと思います。
僕は、高校のプロジェクトを一つずつやっていく中でYFFを始めました。そこから法人化まで5年でできました。やればできるんです。みんなと同じ道を歩むのではなく、恐れず常識を壊していこうと伝えたいですね。

NPO法人 Youth For Future 理事長チャーラル エムレ(Emre Caglar)さん
慶應義塾大学3年生。日本で生まれ、トルコにルーツを持つ家庭環境の中で多様な価値観に触れて育つ。東日本大震災以降、支援活動に取り組む父の姿に影響を受け、「自分が育った日本社会に恩返しをしたい」という思いから、高校在学中にYouth For Futureを学生プロジェクトとして立ち上げる。現在はNPO法人化し、理事長として、児童養護施設や子ども食堂で子どもたちの自己発見と自立を支援するプログラムを展開している。