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東急子ども応援プログラム

リーダーインタビュー

2023.03.17

リーダーインタビュー Vol.10

I Love つづき中 聡美さん

小麦畑を舞台に、子どもたちの感性を育む。
都市農業と子育てを応援する畑の中のチャレンジ

南北に15kmにわたって続く緑道やたくさんの公園、南部の農業専用地区など、緑豊かな環境が広がる横浜市都筑区。都市農業も盛んなこの都筑区の、畑や自然の価値を伝え・広げ・守りたい―― 。そんな願いを込めた活動の一つとして、「I Love つづき」では区内の畑を舞台に、子どもたちが自然に触れ、豊かな感性を育む場を提供しています。
2020年度・2022年度の東急子ども応援プログラム助成対象活動でもある「都筑こども小麦部」にかける思いや今後の展望について、理事の中聡美さんに伺いました。

はじめに「I Love つづき」について教えてください。

イベントからカフェの運営まで、活動テーマは「まちづくり」

I Love つづきは、都筑区でまちづくりをテーマに活動する NPO 法人です。1999 年に生涯学習の支援講座で出会ったメンバー4人からスタートし、2003 年に NPO 法人化して今年でちょうど20年になりました。「まちづくり」は広義な言葉ですが、私たちがやっているのは、地域の調査から気付いた課題をポジティブに解決し、まちの価値を創造していく活動です。近年はさらに、これからまちに関わろうという方たちの中間支援的な役割も果たすようになってきました。現在は「都筑こども小麦部」をはじめ、参加型で楽しめるイベントや環境にやさしい事業、コミュニティカフェの運営などを行っています。

2020年にスタートした都筑こども小麦部は、都筑ハーベスト(※)さんと一緒に、畑の作業や小麦作りの体験の場を子どもたちに提供する活動です。土に触れ、自然の中で自由に遊び、収穫して味わう体験を通して、子どもたちの豊かな五感の発達を促すお手伝いができればと思っています。1年目はコロナ禍で思うように活動できないこともありましたが、2年目には土遊びや種まき、お芋掘りや麦踏みなど畑での体験の他、マルシェやお祭りなどで、収穫した小麦を使用したクッキーや畑で採れた野菜の販売も行いました。クッキーは子どもたちがデザインし、区内の福祉施設や菓子工房、パン屋さんなどに製造をお願いしました。

NPO法人 都筑ハーベストの会…心に障がいのある方が、自然の中で土に触れ、農を実践することで心の健康の回復を図るとともに、「農」を通じ、当事者、農家、ボランティア、地元住民が一体となるコミュニティをつくり、相互に支え合い、助け合える地域社会づくりを行っている。約1200坪の農園で農を実践。

中さんはどのような経緯で、I Love つづきに参画されたのでしょうか。

緑豊かな都筑の魅力を広く発信し、次世代に残したい

「都筑区に広がる素晴らしい畑がなくならないことを願っています」と語る中さん

都筑区が募集していた、区民の手作りホームページを作成する「都筑の魅力探検隊」(現在はつづき交流ステーションと改名)に応募したのがそもそもの始まりでした。当時、まだ小さかった娘とよく緑道を散歩していたのですが、その緑道がすごくいいなぁと思っていたんですね。こういったものを取材したり、ホームページに載せてもらえたらうれしいな、という思いがありました。都筑区は都市農業も発達していて、とても恵まれた環境があるので、ぜひそれを皆さんに知っていただきたいな、と。

いざ魅力探検隊としての活動を始めてみると、本当にさまざまな出会いがありました。I Love つづきの理事長である岩室さんや、そこに集まる人たちとの出会いもその中の一つです。岩室さんたちの思いや「まちづくり」をテーマにした活動はとても共感するところが多く、一緒に活動するうちに、気が付けばどっぷり(笑)。ちょうどその頃 I Love つづきがNPO法人化し、私もイベントなどに関わるようになって、今も楽しく活動しています。

都筑こども小麦部に参加している子どもたちの様子はいかがですか。

自分で考え、動く。五感をフルに働かせて、畑を楽しむ子どもたち

畑での子どもたちは、とても自由でのびのびとしています。自由に行動するのって、今の子どもたちにとっては、結構難しいことだと思うんですよ。大人にいろいろと決められた中で育っているので、何をするにも「これやっていい?」と許可を求める。でも、何度も活動に参加するうちに、自分で判断しながら自由に動くようになっていきます。かといって好き勝手にしているのとは少し違って、大人との関係性もうまくつくりながら、自分の思いもきちんと口に出せるようになるんですね。素晴らしいでしょう?

土遊びのワークショップ。子どもたちの自主性に任せ、大人はできるだけ指示を与えず見守る

そんなふうに子どもたちを育んでいるのは、畑での自由な遊び時間のように感じます。もちろん農作業のお手伝いはするのですが、自由に遊ぶ時間も長めに取るようにしているのはそのため。大人はつい欲張って時間を区切り、「はい次はこれ、次はこれ……」としがちですが、子どもが楽しいと感じることとは、ちょっと違うと気付いたのです。子どもたちは自分が満足するまでずっと同じことをやりたがります。遊び方はいろいろで、大人が「え?」と思うようなことも多いですよ。例えば、ずっと穴を掘っていたり、馬糞や鶏糞などの肥やしの山に登っていたり。そうやって“とことん遊ぶこと”を通して、自分なりの発見や知識を積み重ね、感性が育まれていくように思います。

子どもだけでなく、大人にとっても、畑はたくさんの学びの場

農作業では、都筑ハーベストの通所者さんが野菜の説明をしてくださり、子どもたちの疑問に答えたり、一緒に遊んでくださったりもします。心に障がいを抱えて通所されている方々ですが、人の心の痛みが分かるぶん、子どもたちへの視線がとても優しいんですよ。知識の豊富な方も多いため、子どもたちの興味や世界が広がります。
一方で、通所者さんにとっても、子どもとの時間はリハビリの一環になっており、楽しみに待っていてくださると聞きました。また、子どもだけでなくファミリーでの参加が増えることで、ボランティアが足りていない都筑ハーベストさんに喜んでいただけるという面もありました。そういったことも、この活動を始めて良かったと思えることの一つです。

さらにもう一つの発見は、子どもを育てるためにスタートした活動を通して、親や大人も育てられているということでした。例えば、親って我慢するのが大変ですよね。「そこは危ないから行っちゃだめ」とか、「汚れるからこれはやめなさい」とか、つい言いがちでしょう。でも口を出さなければ、子どもは自分で経験して学んでいきます。口を出すことをやめると親にも余裕ができて、わが子以外の子どもたちにも目を向けられるようになります。

大人も付き添いやスタッフとしてではなく、同じ参加者として楽しむ。親が楽しんでいる姿って、子どももすごくうれしいんですよ。大人同士で会話が弾み過ぎている時でも、子どもは子ども同士でうまくやっていきますし、自分以外にもわが子を見守ってくれる目があります。
畑での友だちができる。違った自分をつくることもできる。自分の居場所をたくさん持つことができる。それは大人も子ども一緒で、そうやって楽しい輪がどんどん広がっていくと良いですよね。

今後の展望を聞かせてください。

みんなにとっての学びの宝庫、貴重な畑を存続させるためにできること

都筑子ども小麦部としては、テーブルやベンチ、ピザ釜を作るワークショップなども検討しています。都筑ハーベストさんの農園は1200坪もあってとても広いので、ちょっとした休憩場所や遊びのスペースを、一緒に作れたらいいなと思っています。畑で取れた小麦と野菜を使って、ピザ釜でピザを焼いたりするのも楽しそうですね。

畑には本当にたくさんの学びがあります。土をどうすると野菜がよく育つかとか、今はきれいに咲いているヒマワリも実は肥料になるとか、他にも生きていくための力になるものが詰まっています。畑での体験を通して、子どもたちには、たくさんの大切なものを見つけてほしいなと思っています。

そのためにも、この先も都筑区の都市農業が続いていくよう、お役に立ちたいと考えています。都筑ハーベストさん以外にもつながりのある農家さんはいますが、それぞれいろいろな課題を抱えていらっしゃいます。例えば、農家で収穫体験イベントをするためには、収穫のタイミングに合わせて種をまき、その日にちょうどよく作物がなるように逆算して生産する必要があり、農家さんにとってはとても大変なこと。でもそうやって、畑で採れた新鮮な野菜を食べられる幸せやその価値を伝えていくことも大切なのだろうと思っています。中には直売や体験のボランティアを募集している農家さんもありますし、そういうことも含めて、皆さんに知っていただく機会を増やすことが、私たちの使命。これからも人を結び、できることをサポートしていきたいと思います。

横浜北部エリアの地元密着番組「なかなかラジオ」で
I Love つづきが紹介されました

NPO法人 I Love つづき 理事中 聡美(なか・さとみ)さん

2003年に都筑区が募集した「都筑の魅力探検隊」(現在はつづき交流ステーションと改名)に参加したのをきっかけに、NPO法人 I Love つづきに加入。参加型イベントの運営やネットショップを担当した後、2013年からコミュニティカフェ・シェアリーカフェの店長を務める。さまざまなイベントを開催する中、地元の無農薬小麦の魅力に気付き、2017年に小麦プロジェクト、2020年からはこども小麦部を発足。プライベートでは自然や植物の美しさを知り、触れる楽しさと心を癒してもらいたいとの思いから、自然素材を使った草花のアレンジ講座を主宰している。

I Love つづき

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東急子ども応援プログラム事務局

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